喫煙のがんを始めとする健康に関する情報(参考文献の紹介)
日本癌学会喫煙対策委員会では、新型たばこを含め、喫煙とがんを始めとする健康にまつわる国内外の様々な研究結果について、注目すべき参考文献を定期的に1~2編ずつ紹介していく取り組みを始めました。ここに紹介する研究論文は、がん予防・がん医療に対するインパクトの強さ、社会的インパクトをはじめ、最新の健康・医療にまつわるトピックスなども参考に選択しています。
【参考文献39】がん生存者の喫煙習慣と認知症リスクの関係
タイトル:Post-diagnosis smoking habit change and incident dementia in cancer survivors著 者:Lee, H. H., Ahn, J., Jiang, C., Lee, Y. G., Kim, H. C., Lee, H.
雑誌名:Alzheimers Dement 2024; 20 (10): 7013
リンク:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11485076/pdf/ALZ-20-7013.pdf
【文献の紹介文】
この研究は、がんを経験した人がその後の喫煙習慣をどのように変えるかによって、将来の認知症リスクがどう変わるのかを調べたものです。韓国の全国医療データを用い、がん診断後3年以上生存した約56万人を対象に、喫煙の変化と認知症の発症リスクを分析しました。
参加者は次の4つのグループに分類されました。
1. 生涯非喫煙者(禁煙を継続)
2. がん診断後に喫煙を開始または再開した人
3. がん診断後に禁煙した人
4. がん診断後も喫煙を継続した人
分析の結果、喫煙を開始・再開した人は認知症のリスクが29%増加し、喫煙を続けた人は31%増加しました。一方で、禁煙した人は喫煙を続けた人に比べてリスクが15%低下することが分かりました。
この研究は、がん生存者が健康的な生活を送るためには、禁煙が非常に重要であることを示しています。特に「喫煙をやめれば認知症リスクが低下する」という新たな科学的証拠を提供しました。
【紹介者コメント】
「がん生存者だからこそ、禁煙を。」 がんと認知症は、一見関係がないように思えますが、実は共通するリスク要因(加齢・炎症・血管障害など)が多いことが知られています。今回の研究は、がんの診断を受けた後の喫煙習慣が、将来の認知症リスクに大きく影響することを示した点で非常に重要です。特に注目すべきなのは、禁煙すれば認知症のリスクが低下する可能性があるという点です。これまで喫煙が認知症リスクを高めることは知られていましたが、がん生存者を対象とした大規模研究で、禁煙の具体的な効果が示されたのは初めてです。
がん治療の進歩により、多くの人ががんを克服し、長く生きる時代になりました。しかし、「治療後の生活の質をいかに向上させるか」が新たな課題です。禁煙はその一環として、認知症の予防にもつながる可能性があり、がん生存者にとって重要な健康行動の一つであることが、この研究で改めて強調されました。
がん診断を受けた方、またそのご家族の方々にとって、「禁煙」は単なる健康習慣のひとつではなく、「将来の認知症を予防するための選択肢」として考えてみる価値があるでしょう。
担当委員:川井 治之 (岡山済生会総合病院)
過去の参考文献
- 参考文献38:診断後の喫煙は膵臓がん術前化学療法の効果を弱める
- 参考文献37:受動喫煙が発がんを促進するメカニズムを遺伝子レベルで解明
- 参考文献36:喫煙による獲得免疫の持続性の変化
- 参考文献35:タバコ1本の喫煙で、寿命が20分短縮
- 参考文献34:乳がんリスクと喫煙について
- 参考文献33:受動喫煙と肺がんの関連をはじめて示した論文
- 参考文献32:加熱式タバコは禁煙する助けにはならない
- 参考文献31:禁煙が早ければ 肺癌の生存期間が延長
- 参考文献30:受動喫煙の誤分類問題に終止符を打った論文
- 参考文献29:喫煙はDNAのメチル化を通じてがんをはじめとする様々な病気のリスクを上げる
- 参考文献28:ヒトのがんに見られる喫煙による変異シグネチャー
- 参考文献27:頭頸部がん診断後の禁煙は治療効果を改善し長期生存をもたらす
- 参考文献26:日本のたばこ対策の進捗状況に応じた喫煙率・死亡率の予測
- 参考文献25
- 参考文献24
- 参考文献23
- 参考文献22
- 参考文献21
- 参考文献20
- 参考文献19
- 参考文献18:肺がん罹患後の禁煙による生存率改善は、禁煙のがん進行抑制効果による
- 参考文献17:喫煙はがん以外にも多くの疾患のリスクと関連している
- 参考文献16:日本における喫煙による年間死亡者数は女性37,000人、男性162,000人
- 参考文献15:喫煙により頭頸部がんのリスクは10倍に上がる
- 参考文献14:少量の喫煙でも頭頸部がんのリスクは上昇する
- 参考文献13:加熱式たばこの利用により血液細胞のDNAのメチル化パターンが変わる
- 参考文献12:喫煙は死亡率を高め、禁煙はそのリスクを下げる:英国医師の追跡調査
- 参考文献11:がん診断前後に禁煙した人は、継続喫煙した人よりも二回目のがん罹患リスクが低い
- 参考文献10
2022年2月にCancer Scienceに掲載されたJCA会員に実施した喫煙状況調査に関するレポート - 参考文献9:加熱式たばこ、紙巻きタバコを両方吸う人は、呼吸機能の低下が多い
- 参考文献8:喫煙はがん、呼吸器疾患等による死亡の大きな原因:アジア人100万人追跡調査
- 参考文献7:ニコチン入り電子タバコはニコチン置換療法よりも禁煙率が高かった
- 参考文献6:日本人のがんによる死亡の原因の24.1%がタバコである
- 参考文献5:喫煙で気管支の細胞における遺伝子変異の数が増加する
- 参考文献4:肺腺がんリスクは受動喫煙で増加する:日本人非喫煙女性の追跡研究
- 参考文献3:加齢による食道粘膜上皮の遺伝子変異は、大量喫煙・飲酒で更に増加する
- 参考文献2:がんと診断された後の禁煙の臨床的な意義を再考せよ
- 参考文献1:肺癌患者におけるCOVID-19感染で、喫煙量が多いと死亡率が高まる






