喫煙のがんを始めとする健康に関する情報(参考文献の紹介)
日本癌学会喫煙対策委員会では、新型たばこを含め、喫煙とがんを始めとする健康にまつわる国内外の様々な研究結果について、注目すべき参考文献を定期的に1~2編ずつ紹介していく取り組みを始めました。ここに紹介する研究論文は、がん予防・がん医療に対するインパクトの強さ、社会的インパクトをはじめ、最新の健康・医療にまつわるトピックスなども参考に選択しています。
【参考文献27】頭頸部がん診断後の禁煙は治療効果を改善し長期生存をもたらす
タイトル:Tobacco cessation after head and neck cancer diagnosis is an independent predictor of treatment response and long-term survival.
著 者:Krutz M, Acharya P, Chissoe G, Raj V, Driskill L, Krempl G, Zhao D, Mhawej R, Queimado L.
雑誌名:Oral Oncol 2022; 134: 106072
リンク:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10427030/pdf/nihms-1873600.pdf
【文献の紹介文】
この研究は、頭頸部がん(口腔・喉頭、咽頭、鼻腔、副鼻腔、舌等)の診断後に禁煙することが治療効果を改善し、長期生存をもたらすことを示しています。タバコをやめた人たちは、やめなかった人たちに比べて、完全寛解(がんによる症状や検査での異常が見られなくなり、正常な機能が回復した状態)になる可能性が3.7倍高かったのです。また、再発するリスクが67%低くなり、何らかの原因で亡くなるリスクも同じく67%低かったという結果でした。
これらの結果から、がんの治療プログラムにはタバコをやめるためのサポートも取り入れるべきだということが強く示されています。
【紹介者コメント】
がん治療において喫煙の影響を評価する研究は限られており、特に頭頚部扁平上皮がん患者における禁煙と喫煙継続の治療への影響についての研究は少ないです。現在喫煙者で診断された患者は非喫煙者や過去の喫煙者に比べて予後が悪いことが知られていますが、診断後に禁煙することで最初の治療の効果や生存率が改善するかどうかについては、あまり調査が行われてきませんでした。今回がん患者さんにとっては、がん治療前に禁煙することが重要であることと医療者にとっては、禁煙サポートの重要性が再確認できました。
担当委員:川井 治之 (岡山済生会総合病院 呼吸器内科・がん化学療法センター)
過去の参考文献
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- 参考文献25
- 参考文献24
- 参考文献23
- 参考文献22
- 参考文献21
- 参考文献20
- 参考文献19
- 参考文献18:肺がん罹患後の禁煙による生存率改善は、禁煙のがん進行抑制効果による
- 参考文献17:喫煙はがん以外にも多くの疾患のリスクと関連している
- 参考文献16:日本における喫煙による年間死亡者数は女性37,000人、男性162,000人
- 参考文献15:喫煙により頭頸部がんのリスクは10倍に上がる
- 参考文献14:少量の喫煙でも頭頸部がんのリスクは上昇する
- 参考文献13:加熱式たばこの利用により血液細胞のDNAのメチル化パターンが変わる
- 参考文献12:喫煙は死亡率を高め、禁煙はそのリスクを下げる:英国医師の追跡調査
- 参考文献11:がん診断前後に禁煙した人は、継続喫煙した人よりも二回目のがん罹患リスクが低い
- 参考文献10
2022年2月にCancer Scienceに掲載されたJCA会員に実施した喫煙状況調査に関するレポート - 参考文献9:加熱式たばこ、紙巻きタバコを両方吸う人は、呼吸機能の低下が多い
- 参考文献8:喫煙はがん、呼吸器疾患等による死亡の大きな原因:アジア人100万人追跡調査
- 参考文献7:ニコチン入り電子タバコはニコチン置換療法よりも禁煙率が高かった
- 参考文献6:日本人のがんによる死亡の原因の24.1%がタバコである
- 参考文献5:喫煙で気管支の細胞における遺伝子変異の数が増加する
- 参考文献4:肺腺がんリスクは受動喫煙で増加する:日本人非喫煙女性の追跡研究
- 参考文献3:加齢による食道粘膜上皮の遺伝子変異は、大量喫煙・飲酒で更に増加する
- 参考文献2:がんと診断された後の禁煙の臨床的な意義を再考せよ
- 参考文献1:肺癌患者におけるCOVID-19感染で、喫煙量が多いと死亡率が高まる