喫煙のがんを始めとする健康に関する情報(参考文献の紹介)|学会概要|日本癌学会

日本癌学会

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喫煙のがんを始めとする健康に関する情報(参考文献の紹介)

最終更新日:2023年8月28日 

日本癌学会喫煙対策委員会では、新型たばこを含め、喫煙とがんを始めとする健康にまつわる国内外の様々な研究結果について、注目すべき参考文献を定期的に1~2編ずつ紹介していく取り組みを始めました。ここに紹介する研究論文は、がん予防・がん医療に対するインパクトの強さ、社会的インパクトをはじめ、最新の健康・医療にまつわるトピックスなども参考に選択しています。

【参考文献22】

タイトル:Smoking and carcinoma of the lung; preliminary report
著 者:Richard Doll and A. Bradford Hill
雑誌名:British Medical Journal 1950;2(4682):739-48
リンク:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14772469/

【文献の紹介文】

ロンドンの20の病院から登録した肺・胃・大腸がん患者をケース、非がん患者をコントロールとしたケース・コントロール研究です。コントロールは同じ性、年齢5歳階級、病院から同時期に1:1で抽出されています。喫煙状況は病院ケースワーカーによるインタビュー調査で調べています。肺がん患者をケースとしたメインの分析では、肺がん患者649名中喫煙者が647名、非喫煙者が2名、非がん患者649名中喫煙者が622名、非喫煙者が27名で、明らかな喫煙との関連が見られました(直接確率p=0.00000064と記載。オッズ比を計算すると14.0)。さらに、1日の喫煙本数にも有意な相違が見られ、この相違は肺がん以外のがん(胃・大腸がん)をケースとした分析では観察されませんでした。1日喫煙量の相違は、肺がん疑い(のちに肺がんでないとわかった)患者との間でも観察され、インタビュアーが事前に患者の病気を知っていたことによるバイアスがかかっていなかったことを示しています。

【紹介者コメント】

リチャード・ドール卿の歴史的なケース・コンロトール論文です。1950年に書かれたわずか10ページの予備解析結果なのですが、図表が16点もあり、しつこいくらいにサブ解析や感度解析をしています。特に、肺がん以外のがん、肺がん疑いの患者も登録して、喫煙との関連が肺がんだけに見られること(特異性)を示している点は秀逸です(ただし、現在では胃がんも大腸がんも喫煙が原因となることがわかっています)。共著者のA・ブラッドフォード・ヒル卿は因果関係の判定に使われる「ヒルの9つの基準」を提唱した方です。当時フィッシャーを筆頭に喫煙と肺がんとの因果関係を否定する学者が多かった中、予想される批判に反論するために著者らが知恵をしぼったことがうかがえます。70年以上経った今でも全く色あせない、まさに名著だと思います。なお、著者らはこのケース・コントロール研究の後、より証拠レベルの高い前向きコホートを実施して、同じBMJ誌に1954年に報告しています(BMJ 1954;1(4877):1451-5)。

担当委員:片野田 耕太 (国立がん研究センタ― がん対策情報センター)

過去の参考文献

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