喫煙のがんを始めとする健康に関する情報(参考文献の紹介)|学会概要|日本癌学会

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喫煙のがんを始めとする健康に関する情報(参考文献の紹介)

最終更新日:2023年7月27日 

日本癌学会喫煙対策委員会では、新型たばこを含め、喫煙とがんを始めとする健康にまつわる国内外の様々な研究結果について、注目すべき参考文献を定期的に1~2編ずつ紹介していく取り組みを始めました。ここに紹介する研究論文は、がん予防・がん医療に対するインパクトの強さ、社会的インパクトをはじめ、最新の健康・医療にまつわるトピックスなども参考に選択しています。

【参考文献20】

タイトル:Association between smoke-free legislation and hospitalizations for cardiac, cerebrovascular, and respiratory diseases. A meta-analysis.
著 者:Tan CE & Glantz SA
雑誌名:Circulation 2012; 126: 2177-2183
リンク:doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.112.121301

【文献の紹介文】

受動喫煙対策の法規制は、喫煙に関連する心臓、脳血管、呼吸器疾患のリスク低下と関連し、より包括的な法律がより大きなリスク低減となっていた。屋内を禁煙にした国、州における喫煙関連の4つの疾患についえ検討した33論文のメタアナリシスを行ったところ、急性心筋梗塞のリスク比は0.848倍(95%信頼区間:0.816-0.881)、突然死を含むその他の心疾患のリスク比は0.610倍(95%信頼区間:0.440-0.847)、脳卒中は0.840倍(95%信頼区間:0.753-0.936)、ぜんそくなどの呼吸器疾患は0.760倍(95%信頼区間:0.682-0.846)であった。さらに、リスク比の減少幅は、禁煙化規制の対象範囲が広いほど大きいこと、すなわち事業所だけでは十分な効果が得られず、酒類の提供を主とする飲食店まで完全禁煙とされているところで最も減少幅が大きくなることが示された。

【紹介者コメント】

たばこ規制枠組条約(FCTC)では、「締約国は、屋内の職場、公共の輸送機関、屋内の公共の場所及び適当な場合には他の公共の場所におけるたばこの煙にさらされることからの保護を定める効果的な立法上、執行上、行政上又は他の措置を国内法によって決定された既存の国の権限の範囲内で採択し及び実施し、並びに権限のある他の当局による当該措置の採択及び実施を積極的に促進する。」となっている。法規制による受動喫煙対策は疾病予防策としても有効であり、より広範な領域を対象とする法規制の導入により大きな効果が得られることを示す当論文は、飲食店を含めた屋内完全禁煙化が目指すべき姿であることを示している。わが国では2020年に改正健康増進法が全面施行されたところであるが、小規模飲食店では喫煙可能であるなど規制としては緩く、まだ道半ばであるといえる。国民の健康を増進するためには、小規模飲食店を含めた完全禁煙化を目指していくべきことを、当該論文により改めて認識しておきたい。

担当委員:平野 公康 (国立がん研究センター がん対策情報センター)

過去の参考文献

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