日本癌学会禁煙宣言|学会概要|日本癌学会

日本癌学会

学会概要

日本癌学会禁煙宣言

最終更新日:2023年4月3日 

国内外で行われた多くの研究から、たばこはがんの予防可能な最大の要因であり、また喫煙者本人だけでなく、受動喫煙が周囲の人の肺がんの原因であることも明らかにされている。さらに、がんのみならず、心疾患や呼吸器疾患等、たばこが関与する疾病は数多く、わが国では年間約14万人の命がたばこによって失われている。

早くから喫煙率が低下した欧米諸国では、その数十年後に肺がんをはじめとする喫煙との関連が強いがんの死亡率の低下が観察されている。欧米に遅れてはいるものの、わが国でも、昨今の喫煙率の低下にともない喫煙関連がんの死亡率は下降傾向に転じている。肺がん、膀胱がん等の喫煙関連がんの罹患率低下は、この傾向を支持するものである。

我が国でもたばこ規制・対策が実施されてきた。2003年には健康増進法が施行され、第25条で受動喫煙防止の努力義務が規定された。WHOたばこ規制枠組条約(FCTC)は2005年に発効し、一般義務第5条第3項に「公衆衛生政策をたばこ産業の干渉から保護する」ことが盛り込まれている。2007年にはがん対策基本法が施行された。2012年に策定された健康日本21(第二次)及び第2期がん対策推進基本計画においては、国として初めて、喫煙率削減の目標値が設定された。2018年には「望まない受動喫煙のない社会の実現」として、受動喫煙ゼロを意図する目標も制定された。死亡率・罹患率の傾向を鑑みるに、我が国のたばこ規制・対策の一層の推進が更なる成果をもたらすことに疑いの余地はない。

近年の注目すべき動向に、加熱式たばこを代表とする新型たばこの登場がある。加熱式たばこが従来型のたばこより健康被害が少ないとの誤解を招くような広告・販売促進活動が行われている。しかしながら、加熱式たばこには従来型の紙巻たばこ同様、発がん物質を含む有害物質が確実に含まれており、健康への悪影響が懸念されるのが実態である。たばこ産業は、健康被害や中毒性について危険性を隠し、消費者の健康を故意に害してきたことが世界的に明らかになっている。この歴史に鑑み、新型たばこに関しても、有害である、ということを前提とした取組みが必要と考えられる。世界保健機関(WHO)も、「すべてのタバコ製品は健康にリスクをもたらすもの」との声明を発出している。

日本癌学会は国内の諸学会に先んじて2003年に禁煙宣言を発表、以後喫煙対策委員会を設置し、他の関連学会と協調しながら本邦における喫煙対策に関する幅広い活動を行ってきた。本2022年改定は、現代の喫煙とがんを取り巻く状況を踏まえたものであり、現在の日本癌学会のたばこ問題に対する決意を示すものである。

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