喫煙のがんを始めとする健康に関する情報発信【参考文献9】|学会概要|日本癌学会

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喫煙のがんを始めとする健康に関する情報発信【参考文献9】

最終更新日:2023年4月4日 

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タイトル: Changes in smoking habits and behaviors following the introduction and spread of heated tobacco products in Japan and its effect on FEV 1 decline: a longitudinal cohort study.
著者: Harada S, Sata M, Matsumoto M, Iida M, Takeuchi A, Kato S, Hirata A, Kuwabara K, Shibuki T, Ishibashi Y, Sugiyama D, Okamura T, Takebayashi T.
雑誌名: J Epidemiol. 2021 (in press)
リンク: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34657910/

【文献の紹介文】

日本では加熱式たばこ製品(HTP)の使用が急速に増加している。このような急速な普及にもかかわらず,HTP使用の健康への影響についてはほとんど知られていない。本論文では、本邦におけるHTP使用によるその後の喫煙習慣の変化ならびに呼吸機能(FEV1: 一秒量:一秒間に吐き出せる空気の量)の変化を約3300人の対象者に対して経時的に検討を行っている。
対象者を、一度も喫煙したことがない人、過去に喫煙したことがある人、紙巻きたばこのみの喫煙者、HTPのみの喫煙者、デュアル喫煙者の5集団に分類し、喫煙消費量の変化、呼吸機能の一つの指標である一秒量の経時的な変化を検討した。結果は以下の①、②、③の三つに集約される。
①デュアル喫煙者のみでタバコ製品全体の喫煙・使用本数が増加した一方、その他の喫煙者集団では増加しなかった。
②デュアル喫煙者の1秒量の年間減少量は、紙巻きたばこのみの喫煙者よりも大きかった。
③HTPのみの喫煙者の1秒量の減少は、紙巻きたばこのみの喫煙者と同様であった。
著者らは、たばこ政策において、デュアル喫煙を高リスクとして取り扱う事を主張している。
 

【紹介者コメント】

HTPは、紙巻きタバコよりも有害物質の少ない代替品としてのマーケティングがなされているが、①の結果より、デュアル喫煙者になってしまった人はタバコ製品をより多く使用しており、有害物質を減らすというそもそものHTP導入の動機とはかけ離れた喫煙状況になっている点が興味深い。これは、かつてフィルター付き、低ニコチン・低タールのタバコが市場に導入された際に、喫煙者の利用タバコの変更の意図に反して、喫煙量が増えたことと酷似する。
また、②の結果より、HTPと紙巻きタバコのデュアル喫煙者になってしまった人は、呼吸機能の一つの指標である、一秒量の低下が、紙巻きタバコ単独の喫煙者よりも大きく、デュアル喫煙者はより大きな呼吸機能障害を引き起こす事を示唆する。
③の結果は、HTP単独による呼吸機能の低下は、紙巻きタバコ単独の喫煙者と同じレベルで発生することを示している。HTPは決して紙巻きタバコよりも健康への害が少ないタバコ製品ではないことが示されている。
HTPの健康影響に関する知見はまだ少ないが、少なくとも従来の紙巻きタバコ同様、害をもたらすものである、という事が示された点は大きい。

担当委員:松尾 恵太郎 (愛知県がんセンター研究所 がん予防研究分野)

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