歴代受賞者一覧|学会学術賞|日本癌学会

日本癌学会

学会学術賞

歴代受賞者一覧

最終更新日:2023年8月21日 

第32回 2023年(令和5年)

小川   誠司(京都大学大学院 医学研究科)

「網羅的ゲノミクスによるがんの病態解明と初期発がんに関する革新的研究」
小川誠司博士は、網羅的ゲノム解析を駆使した研究により、骨髄異形成症候群(MDS)や若年性骨髄単球性白血病、成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)、赤白血病などの造血器悪性腫瘍の病態の全貌を解明した。さらに、食道上皮や炎症性腸疾患および再生不良性貧血などの前がん病変からの発がんなど、早期発がん機構を解明に多大なる貢献をした。

第31回 2022年(令和4年)

間野 博行(国立がん研究センター研究所/がんゲノム情報管理センター)

「本質的発がん原因遺伝子の発見とゲノム医療の先導」
間野博行博士は、EML4-ALK融合遺伝子が肺がんの原因遺伝子異常であることを発見し、抗がん薬開発史上最速スピードでのALK阻害薬の承認や、耐性が生じにくい新世代ALK阻害薬の開発を導いた。さらにROS1およびRET融合遺伝子を発見しそれぞれに対する分子標的薬開発を誘導し、肺がんの個別化医療の扉を開いた。また、がんゲノム医療体制の構築を中心的な立場で牽引し、日本の保険診療で実施できるがんゲノム医療を実現した。

第30回 2021年(令和3年)

中村 卓郎(公益財団法人がん研究会 がん研究所 副所長)

「白血病・肉腫原因遺伝子の同定とモデル化による発がん機構の解明」
中村卓郎博士は、白血病や骨軟部肉腫の発生機構を研究する中で、ホメオドメイン遺伝子群やBCL11A、TRIB1偽キナーゼ、NUP98及びCIC-DUX4融合遺伝子などの原因遺伝子を次々に同定した。同定した遺伝子の発がんにおける機能の本質を明らかにするために、先進的でユニークな動物モデルを開発し、がん細胞の発生起源や微小環境との相互作用に関する知見を示すことで、新たな治療法の可能性を切り拓いた。

第29回 2020年(令和2年)

佐谷 秀行(慶應義塾大学医学部先端医科学研究所 遺伝子制御研究部門 教授)

「がん幹細胞を標的とした治療戦略の開発」
佐谷秀行博士は、がんの不均一性および治療抵抗性に関する研究を長年行い、腫瘍の発生および維持に中心的な役割を果たすがん幹細胞の特性とその分子機構解明に心血を注いできた。CD44v分子がシスチントランスポーターxCTを介してがん幹細胞の酸化ストレス抑制に働いていることを見出し、その分子機構に基づいた先駆的な創薬研究を行い、実臨床に持ち込んだ。更に各種がん幹細胞を人工的に作製し、がんの種類によって異なる治療抵抗性の分子基盤解明に大きく貢献した。

第28回 2019年(令和元年)

畠山 昌則(東京大学大学院 医学系研究科 微生物学分野 教授)

「ヘリコバクター・ピロリ感染による胃がん発症機構の研究」
胃がんは細菌感染を基盤に発症することが明らかとなっている唯一のヒトのがんである。畠山昌則博士は、ヘリコバクター・ピロリ菌により産生され胃上皮細胞内に直接打ち込まれる細菌タンパク質CagAが、複数の宿主細胞内シグナル制御分子と異常な複合体を形成することでそれらの分子機能を脱制御あるいは不活化し、細胞のがん化を促すことを世界に先駆けて明らかにした。畠山博士の研究は、"細菌発がん"という新たな発がんパラダイムを切り拓いた。

第27回 2018年(平成30年)

宮園 浩平(東京大学大学院医学系研究科 病因・病理学専攻 分子病理学分野 教授)

宮園浩平博士は、がんの浸潤や進展に密接に関与するサイトカインであるTGF-βとそのファミリーの因子のシグナル伝達機構を中心に先駆的な業績をあげた。宮園博士はTGF-βによる上皮―間葉転換(EMT)誘導の分子機構をがん遺伝子Rasとの関連を中心に明らかにし、さらに最新のイメージング技術などを用いてTGF-βによる上皮―間葉転換ががんの浸潤や転移に重要な役割を果たすことを明らかにした。

第26回 2017年(平成29年)

高橋  隆(名古屋大学大学院医学系研究科分子腫瘍学分野 教授)

高橋隆博士は、ヒト肺がんの発生機序の解明を目指した研究に一貫して取り組み、p53遺伝子やlet-7マイクロRNAなどの高頻度の異常や、肺腺がんのリネジ生存がん遺伝子としてのTTF-1とその標的遺伝子ROR1の重要性を世界に先駆けて報告し、これら分子機能の解明と臨床病態形成における重要性を明らかとした。博士が多岐に亘り展開してきた新規性と独自性に富んだ研究は、肺がんの分子病因の解明に大きく貢献した。

第25回 2016年(平成28年)

秋山  徹(東京大学分子細胞生物学研究所 教授)

秋山徹博士は、EGF受容体ファミリーのもつチロシンキナーゼ活性が細胞癌化に必須の役割を果たしていることを明らかにし、癌の分子標的薬開発への道を示した。また、Wnt/APCシグナルを制御する因子としてAsef、Axinなどを同定してその機能を解明し、癌化における重要性を分子・細胞・個体レベルで示した。さらに、癌細胞の造腫瘍性に必須な遺伝子群を網羅的に検索し、長鎖非コードRNAを含む重要な標的分子を見出し、新たな創薬への可能性を開いた。

第24回 2015年(平成27年)

野田 哲生(公益財団法人がん研究会がん研究所 所長)

野田博士は、先進的なマウス分子遺伝学手法を駆使し、多数のがん関連遺伝子の個体レベルでの機能を明らかにし、また、多くのヒト発がんモデルマウスの樹立に成功した。中でも、APC遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスの作製及びその解析は、がん抑制遺伝子の不活化による哺乳類個体での発がんを世界で初めて証明したもので、その意義は大きい。さらに、このような先進的マウス遺伝学手法の確立とその応用による発がんメカニズムの解明は、発がん研究のみならずがんの治療法開発にも大きく貢献した。

第23回 2014年(平成26年)

山本  雅(沖縄科学技術大学院大学 教授)

山本博士は、世界に先駆けてがん遺伝子erbBの腫瘍形成能を明らかにし、その遺伝子配列を決定した。この発見は、がん遺伝子erbBが成長因子受容体遺伝子に由来することを明らかにし、がんと正常が表裏にあることを示した。さらにc-erbB2を見いだし、その高発現がヒトがんの進展に関わることを見いだすなど、がんの分子標的治療開発への道を開いた。また、ErbBファミリーやSrcファミリーチロシンキナーゼによる細胞シグナル伝達を解析し、それらが細胞の増殖や機能制御に重要であることを示した。

第22回 2013年(平成25年)

清木 元治(高知大学医学部付属病院 次世代医療創造推進センター 特任教授)

清木博士は、がん細胞が周囲組織に浸潤する際の鍵となる酵素として、膜型マトリックスメタロプロテアーゼMT1-MMPを発見し、MT1-MMPによるがん細胞表層での様々な基質タンパク質の切断による機能変換が、がんの増殖、浸潤、転移の制御に重要であることを明らかにした。このことにより、がん細胞表層における"Pericellular Proteolysis"の重要性を明らかにする先駆的な研究で世界をリードした。

第21回 2012年(平成24年)

長田 重一(京都大学大学院医学研究科 分子生体統御学講座分子生物学 教授)

ヒトの体内では毎日数10億の細胞が死滅する。この細胞死の過程はアポトーシスと命名されていたが、その分子機構、生理作用は長い間不明であった。長田重一氏はアポトーシスを引き起こすサイトカインを発見し、細胞死の分子機構を解明した。ついで、死細胞がマクロファージによって貪食・分解される分子機構を解析し、細胞死や死細胞貪食の異常が、がんや自己免疫疾患などの病気をもたらすことを見いだした。

第20回 2011年(平成23年)

前田  浩(崇城大学薬学部/熊本大学名誉教授(医学))

微生物感染局所での宿主の応答としてキサンチンオキシダーゼやNADPH酸化酵素、さらにはNO合成酵素の活性化が起こり、スーパーオキサイドやNOなどラジカル分子が大量に生成し、細胞や核酸に傷害(変異など)を起こすことを初めて明らかにした。さらに、ネオカルチノスタチンの研究からスマンクスの創製という世界初の高分子型制癌剤を完成させ、高分子型薬剤が腫瘍局所の血管透過性の亢進により腫瘍部に選択的にデリバリーされることを見出した。その現象「EPR効果」は昨年は約8千件も引用されている。

第19回 2010年(平成22年)

廣橋 説雄(慶應義塾大学 教授)

廣橋説雄博士は、病理診断学を基盤にモノクローナル抗体や遺伝子解析など、最新の分子細胞科学的手法を用いてヒトがんの発生と浸潤・転移などの病態の解明に取り組み、肝がんの多段階・多中心発生の証明、ヒトがんにおける細胞間接着不活化の多様な機構の発見そして病理診断や血清診断に有用な腫瘍マーカーの開発など世界をリードする研究を進め、その成果が実際のがん臨床にも応用される顕著な業績を挙げた。

第18回 2009年(平成21年)

上田 龍三(名古屋市立大学 腫瘍免疫内科学 教授)

上田博士は、ケモカインレセプターであるCCR4が、難治性血液腫瘍である成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)等に強く発現しており、抗CCR4抗体の糖鎖を修飾することにより、強力な抗体依存性細胞障害活性と抗腫瘍効果が発現することを発見した。更に、がんに対する抗体療法としては本邦初となる、抗CCR4抗体を用いたCCR4陽性T細胞性腫瘍に対する臨床試験を展開することに成功した。

第17回 2008年(平成20年)

谷口 維紹(東京大学大学院 医学系研究科 免疫学 教授)

谷口維紹博士はb型インターフェロンやIL-2の遺伝子を世界に先駆けて単離し、発癌や免疫の制御に深く関与しているサイトカインの実体とその作用機構に関する分子レベルの研究の端緒を切り拓いた。また、サイトカインの遺伝子発現とシグナル伝達の研究を大きく進展させ、特にIRF転写因子ファミリーの発見を通して発癌抑制や免疫制御等におけるそれらの多彩な機能を明らかにする先駆的な研究を推進した。

第16回 2007年(平成19年)

高橋 利忠(健康科学総合センター センター長/愛知県がんセンター 名誉総長)

癌免疫療法の基礎と応用に関する研究
動物実験モデルを用いたがん抗体療法とワクチン療法の研究、ヒトメラノーマ等の腫瘍細胞表面抗原の血清学的研究、ヒト造血器腫瘍等に対するモノクローナル抗体の作成と自家骨髄移植療法への応用研究、ヒト血液細胞特異的マイナー移植抗原の同定と骨髄移植後の白血病再発例に対する免疫療法の応用研究、など数十年間にわたる日米両国におけるがん免疫療法の研究により、日本のがん免疫研究の牽引者として大いに貢献した。

第15回 2006年(平成18年)

下遠野邦忠(京都大学ウィルス研究所 がんウィルス研究部門 教授)

C型肝炎ウィルス感染による肝がん発症の予防に関する研究
HCVのゲノム構造解析、タンパク質の構造、産生機構、ウィルスタンパク質の機能解明に加え、ウィルスゲノム複製に関わる細胞側の因子の解明などの研究に従事し、その過程でウィルス感染の検出に関する新しい知見、あるいはHCV感染を排除するための研究の発展に貢献した。

第14回 2005年(平成17年)

澁谷 正史(東京大学医学系研究所 教授)

藤浪肉腫ウィルスのがん遺伝子v-fpsを初めて単離リし、またヒト脳腫瘍におけるEGF受容体の質的異常を初めて明らかにするなど、癌研究全般で多くの優れた業績を挙げている。また、内皮細胞特異的な受容体キナーゼflt-1(VEGF受容体_1)を世界に先駆けて単離し、VEGF受容体群のシグナルの特徴とその血管新生・転移・腹水形成における重要性を示した。

第13回 2004年(平成16年)

鶴尾  隆(東京大学 分子細胞生物学研究所 教授)

長年に亘り抗癌剤耐性の研究を推進しカルシウム拮抗剤等に多剤耐性克服作用を発見した。またアポトーシス耐性の分野においても卓越した貢献をなし、耐性克服を中心とした分子標的治療法の国際的な研究と開発をリードしている。この発見は国内外で極めて高く評価されており、癌研究に多大なる貢献をなした。

第12回 2003年(平成15年)

伊藤 嘉明(Institute of Molecular Cell Biology, Singapore)

胃癌の発生に関わる主要ながん抑制遺伝子RUNX3を発見した。この発見は国内外で高く評価されており、癌研究に多大なる貢献をなした。

大木  操(国立がんセンター研究所)

急性骨髄性白血病の染色体転座の解析によりAML1等を発見し、また、AML1が造血細胞の分化増殖に重要な役割を果たしていることを明らかにするなど造血器腫瘍分野において輝かしい成果をあげた。

第11回 2002年(平成14年)

中村 祐輔(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター センター長)

APCやp53関連遺伝子など多数のがんに係る遺伝子を発見してその機能を明らかにし、又、日本のゲノム科学の推進に多大なる貢献をなした。

第10回 2001年(平成13年)

関谷 剛男(国立がんセンター研究所 元部長/医薬品副作用被害救済研究振興調査機構 研究顧問)

微細なDNA異変を簡便に検出するSSCP法の発明により広く癌研究の発展に寄与し、又機関誌JJCRの編集に多大な貢献をした。

第9回 2000年(平成12年)

小林  博(北海道大学 名誉教授/財団法人 札幌がんセミナー 理事長)

腫瘍病理学特にがんの異物化研究において優れた業績を挙げ、又札幌がんセミナーの運営等を通して癌研究の発展に寄与した。

第8回 1999年(平成11年)

吉田 光昭(萬有製薬(株)つくば研究所 所長)

成人T細胞白血病の原因ウイルスHTLV-1の研究において優れた業績を挙げ、又広く癌研究の発展に寄与した。

第7回 1998年(平成10年)

黒木登志夫(昭和大学 腫瘍分子生物学研究所 所長)

試験管内発癌研究及びシグナル伝達研究において多くの業績を挙げ、又優れた著作により人々の癌研究への理解を深めた。

第6回 1997年(平成9年)

橋本 嘉幸(財団法人 佐々木研究所 所長)

膀胱発癌の実験的研究及び免疫学、ことにモノクロナール抗体の医学・薬学への応用研究において優れた業績を挙げ、また広く癌研究の発展に寄与した。

第5回 1996年(平成8年)

伊東 信行(名古屋市立大学 学長)

化学発癌研究、特に環境物質の発癌性同定の研究において優れた業績を挙げ、また広く癌研究に寄与した。

第4回 1995年(平成7年)

佐藤 春郎(東北大学 名誉教授)

吉田肉腫・腹水肝癌を用いたがん細胞の生物学研究において優れた業績を挙げ、また広く癌研究の発展に寄与した。

第3回 1994年(平成6年)

豊島久真男(大阪府立成人病センター 総長)

がんウイルスとがん遺伝子の研究において優れた業績を挙げ、また広く癌研究の発展に寄与した。

第2回 1993年(平成5年)

菅野 晴夫(財団法人 癌研究会癌研究所 所長)

ヒト癌の特性とその自然史の解明について優れた業績を挙げ、また広く癌研究の発展に寄与した。

第1回 1992年(平成4年)

杉村  隆(国立がんセンター 名誉総長)

癌の発生並びに本能の解明に優れた業績を挙げ、また広く癌研究の発展に寄与した。

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