喫煙のがんを始めとする健康に関する情報発信【参考文献13】
タイトル: | DNA methylation abnormalities and altered whole transcriptome profiles after switching from combustible tobacco smoking to heated tobacco products |
著 者: | Hideki Ohmomo, Sei Harada, Shohei Komaki, Kanako Ono, Yoichi Sutoh, Ryo Otomo, So Umekage, Tsuyoshi Hachiya, Kota Katanoda, Toru Takebayashi, Atsushi Shimizu |
雑誌名: | Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2021 Nov 2;cebp.0444.2021. doi: 10.1158/1055-9965.EPI-21-0444 |
リンク: | https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34728466/ |
【文献の紹介文】
この論文は、地域住民を対象に加熱式タバコがDNAメチル化および遺伝子発現パターンへ与える影響を解析しました。その結果、従来型の紙巻きタバコから加熱式タバコへ切り替えた人のDNAメチル化および遺伝子発現パターンは、紙巻きタバコ喫煙者よりも程度は低いものの、非喫煙者と比べて喫煙に関わるDNAの低メチル化や遺伝子発現の増減が多く見られました。解析対象となった加熱式タバコ使用者は紙巻きから加熱式に切り替えて平均2年しか経っていない人であったことから、加熱式タバコのみの影響であるかどうかの判断が難しいものの、加熱式タバコの健康影響の可能性を示した意義がある研究です。今回の解析では、先行研究で喫煙との関連が報告されているDNAメチル化部位のみを解析しており、他の部位への影響は明らかにはなっていません。加熱式タバコのより詳細な健康影響は、加熱式タバコのみの使用者を対象とした研究や、長期的な追跡調査を行う研究、ゲノム網羅的な研究などが必要です。
【紹介者コメント】
近年若い人を中心に広がっている加熱式タバコは、日本が世界のシェアの8割近くを占めていると言われています。加熱式タバコにはたばこ葉が含まれており、タバコ税もかかっている立派なタバコ製品です。加熱式タバコが発生するエアロゾルからは、発がん物質を含む多くの化学物質が検出されています。発売後まだ期間が短いため直接的な健康被害を示す証拠が乏しかったのですが、今回の研究はその可能性をDNAメチル化と遺伝子発現パターンで示したものです。従来、タバコと病気との関連を示すには長期間の追跡調査が必要でしたが、今回のようにがんの発生過程の中間的な指標を用いることで短期に健康影響を調べることができます。めまぐるしく製品が変わる新型タバコの研究には、このような中間指標を用いるアプローチがますます重要になってくると思います。
担当委員: 片野田 耕太 (国立がん研究センタ―がん対策情報センター )