日本癌学会

学会概要

喫煙のがんを始めとする健康に関する情報(参考文献の紹介)

最終更新日:2026年2月9日New 

日本癌学会喫煙対策委員会では、新型たばこを含め、喫煙とがんを始めとする健康にまつわる国内外の様々な研究結果について、注目すべき参考文献を定期的に1~2編ずつ紹介していく取り組みを始めました。ここに紹介する研究論文は、がん予防・がん医療に対するインパクトの強さ、社会的インパクトをはじめ、最新の健康・医療にまつわるトピックスなども参考に選択しています。

【参考文献35】タバコ1本の喫煙で、寿命が20分短縮

タイトル:The price of a cigarette: 20 minutes of life?
著 者:Sarah E. Jackson, Martin J. Jarvis, Robert West
雑誌名:2025 May;120(5);810-812
リンク:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/add.16757

【文献の紹介文】

この論文では、「喫煙者は平均してタバコ1本につき約20分(男性17分、女性22分)の寿命が短くなる」という警句を英国における最新の疫学データに基づき、再評価したものです。これは2000年にBMJ誌が発表した「1本で11分」という推定を、最新の男性医師50年追跡調査や「100万人女性研究」をもとに、より精密に再評価した結果です。この数値を当てはめると、1日20本吸う人は1日で6.7時間、1年間で101日分の寿命を失うことになり、生涯では非喫煙者に比べ寿命が約10年短くなるという事実とも整合します。
本論文では、タバコの害が累積的であることや、本数を減らしても深く吸い込む「補償行動」によって曝露量が変わらない点、そして寿命の短縮が人生の終末期ではなく比較的健康な中年期に顕著にみられることを指摘しています。しかし、この「死のエスカレーター」から早く降りれば降りるほど、より長く健康的な生活が期待できます。例えば1月1日に10本/日を吸っていた人が禁煙すれば、1月8日には寿命1日、8月には1か月、年末には50日分の寿命を取り戻すことができる計算になります。このように「タバコの害」を「時間」という単位で可視化することは、あらゆる年齢層において行動変容を促す重要な視点を提供しています。

【紹介者コメント】

喫煙は「将来の話」ではありません。タバコ1本で寿命が20分縮むという事実は、目の前の「今」に直結しています。忙しい診療の合間に一服するその1本が、あなたの健康な時間を確実に削っています。もし1日10本吸うなら、1年で50日分の寿命を捨てていることになります。そしてその時間は老後の話ではなく、健康で活動的な貴重な日々を削ること意味しています。喫煙習慣は「自己責任」ではなく「社会課題」であり、「タバコの害」は自分だけでなく、家族・同僚・患者など周囲にも影響します。「タバコ1本だけ」は「20分の寿命を失う」と同義ということを意識して欲しいと思っています。

担当委員:田中 希宇人(日本鋼管病院 呼吸器内科)
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2000年にBMJ誌にて発表された「タバコを1本あたり、平均して11分の寿命の短縮」という値が、今回の研究では「タバコを1本あたり、平均して20分の寿命の短縮」へと推移していました。今回の論文での計算では、先の研究で使用されていたBritish Doctors Studyの追跡データに1991年以降の情報を追加し、それに加えてMillion Women Studyによる女性の死亡率に関する追跡データも考慮されているため、それらの要素から生じた変化だと思われます。タバコ1本当たりの寿命に与える影響が増大した理由として、タバコ製品自体の変容や人々の行動様式の変化、そこに関わる社会規模の出来事など、があるものと考えられます。社会規模で禁煙を推進するために、「タバコを1本吸うと20分の寿命の短縮」という具体的なリスクの説明は、タバコの有害性を伝えやすく、有用だと考えられました。

担当委員:田淵 貴大(東北大学大学院医学系研究科 公衆衛生学分野)
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ほとんどの喫煙者は、喫煙が自分の命を縮める可能性があることを認識していますが、自身が吸っているたばこの悪影響自体を意識していることは少ないと考えられます。英国には、先行研究に裏づけられた優れたデータ基盤があり(参考文献12、22を参照)、そこから導き出される「たばこ1本あたりの代償、寿命20分」という本研究の結論には大きな訴求力があります。健康寿命の延伸に禁煙が重要であることをあらためて認識させられます。

担当委員:平野 公康(大阪経済大学 人間科学部)

過去の参考文献

  • 参考文献34:乳がんリスクと喫煙について
  • 参考文献33:受動喫煙と肺がんの関連をはじめて示した論文
  • 参考文献32:加熱式タバコは禁煙する助けにはならない
  • 参考文献31:禁煙が早ければ 肺癌の生存期間が延長
  • 参考文献30:受動喫煙の誤分類問題に終止符を打った論文
  • 参考文献29:喫煙はDNAのメチル化を通じてがんをはじめとする様々な病気のリスクを上げる
  • 参考文献28:ヒトのがんに見られる喫煙による変異シグネチャー
  • 参考文献27:頭頸部がん診断後の禁煙は治療効果を改善し長期生存をもたらす
  • 参考文献26:日本のたばこ対策の進捗状況に応じた喫煙率・死亡率の予測
  • 参考文献25
  • 参考文献24
  • 参考文献23
  • 参考文献22
  • 参考文献21
  • 参考文献20
  • 参考文献19
  • 参考文献18:肺がん罹患後の禁煙による生存率改善は、禁煙のがん進行抑制効果による
  • 参考文献17:喫煙はがん以外にも多くの疾患のリスクと関連している
  • 参考文献16:日本における喫煙による年間死亡者数は女性37,000人、男性162,000人
  • 参考文献15:喫煙により頭頸部がんのリスクは10倍に上がる
  • 参考文献14:少量の喫煙でも頭頸部がんのリスクは上昇する
  • 参考文献13:加熱式たばこの利用により血液細胞のDNAのメチル化パターンが変わる
  • 参考文献12:喫煙は死亡率を高め、禁煙はそのリスクを下げる:英国医師の追跡調査
  • 参考文献11:がん診断前後に禁煙した人は、継続喫煙した人よりも二回目のがん罹患リスクが低い
  • 参考文献10
    2022年2月にCancer Scienceに掲載されたJCA会員に実施した喫煙状況調査に関するレポート
  • 参考文献9:加熱式たばこ、紙巻きタバコを両方吸う人は、呼吸機能の低下が多い
  • 参考文献8:喫煙はがん、呼吸器疾患等による死亡の大きな原因:アジア人100万人追跡調査
  • 参考文献7:ニコチン入り電子タバコはニコチン置換療法よりも禁煙率が高かった
  • 参考文献6:日本人のがんによる死亡の原因の24.1%がタバコである
  • 参考文献5:喫煙で気管支の細胞における遺伝子変異の数が増加する
  • 参考文献4:肺腺がんリスクは受動喫煙で増加する:日本人非喫煙女性の追跡研究
  • 参考文献3:加齢による食道粘膜上皮の遺伝子変異は、大量喫煙・飲酒で更に増加する
  • 参考文献2:がんと診断された後の禁煙の臨床的な意義を再考せよ
  • 参考文献1:肺癌患者におけるCOVID-19感染で、喫煙量が多いと死亡率が高まる
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