喫煙のがんを始めとする健康に関する情報発信【参考文献15】|学会概要|日本癌学会

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喫煙のがんを始めとする健康に関する情報発信【参考文献15】

最終更新日:2023年5月16日 

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タイトル: Tobacco-related carcinogenesis in head and neck cancer.
著者: Jethwa, AR and Khariwala, SS
雑誌名: Cancer metastasis rev (2017) 36; 411-423
リンク: https://link.springer.com/content/pdf/10.1007/s10555-017-9689-6.pdf

【文献の紹介文】

頭頸部がん(頭頸部扁平上皮がん(HNSCC))は、深刻な病気である。患者は集中的な治療を必要とし、しばしば容貌が損なわれ、衰弱していく。生き残った患者は、音声明瞭度の低下、咀嚼や嚥下の困難、外観上の醜さ、味覚の喪失などの問題を抱えている。さらに、HNSCCの生存者はしばしば障害を負い、仕事に復帰できないことから、HNSCCに関連する経済的・社会的コストは膨大なものとなる。HNSCCは、タバコの使用と強く関連する数多くの癌の一つで、喫煙者のHNSCCリスクは、非喫煙者の約10倍である。新規HNSCC診断の70-80%は、タバコとアルコールの使用に関連している。
タバコ製品の発がん性成分を理解し、それがどのようにHNSCCにつながるのかを理解することは、規制や害の軽減策に不可欠である。現在までに、タバコ製品に含まれるニトロソアミンや他の発がん性物質が、がんの発生と関連していることがわかっている。DNA付加体の形成によるDNA構造の破壊は、多くの発がん物質に共通する変異原性の経路であると考えられている。タバコ製品の成分、タバコの使用、タバコの規制に関する熱心な取り組みにより、世界のいくつかの地域ではタバコの使用が減少している。しかしながら、タバコは世界中で大きな害を与え続け、HNSCCの発生の一因となっているため、まだ多くの課題が残されている。

【紹介者コメント】

タバコの煙は、鼻や口からからだの中に入ります。このため、頭頸部がんは最も喫煙との関連が強く見られますが、喫煙者の頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)リスクが、非喫煙者の約10倍という数字は衝撃的です。頭頸部には、呼吸、食事(咀嚼/そしゃく、嚥下/えんげ)など人間が生きる上で欠かせない機能や発声、味覚、聴覚など日常生活を送るうえで重要な機能が集中しています。この部分に障害が起きると、QOLに大きく影響することになります。
多くの頭頸部がんの誘因が喫煙と過度の飲酒によるものであることが判明しています。これらの誘因を排除するためには、一人ひとりに対する禁煙・節酒の心がけに留まらず、論文結語中に記述があるように、タバコの生産と販売に関する研究と規制の取り組みが極めて重要であることを再認識させられます。

担当委員: 平野 公康 (国立がん研究センター がん対策情報センター)

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