喫煙のがんを始めとする健康に関する情報(参考文献の紹介)|学会概要|日本癌学会

日本癌学会

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喫煙のがんを始めとする健康に関する情報(参考文献の紹介)

最終更新日:2023年8月29日 

日本癌学会喫煙対策委員会では、新型たばこを含め、喫煙とがんを始めとする健康にまつわる国内外の様々な研究結果について、注目すべき参考文献を定期的に1~2編ずつ紹介していく取り組みを始めました。ここに紹介する研究論文は、がん予防・がん医療に対するインパクトの強さ、社会的インパクトをはじめ、最新の健康・医療にまつわるトピックスなども参考に選択しています。

【参考文献23】

タイトル:Systematic review and meta-analysis of the economic impact of smoking bans in restaurants and bars
著 者:Cornelsen L, McGowan Y, Currie-Murphy LM, Normand C
雑誌名:Addiction. 2014; 109 (5): 720-7
リンク:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/add.12486

【文献の紹介文】

公共の場での喫煙の禁止は非喫煙者及び労働者を受動喫煙の害から守る一般的な方法であり、法規制の必要性に関しては疑問の余地がありません。しかし、飲食店などサービス業における喫煙の禁止による経済的なインパクトについては議論が続いていました。この研究では2012年までに発表された論文のレビューを行い、Meta-analysisにより、喫煙禁止法の経済的インパクトを評価することを目的としました。主にアルコールを飲むところとしてバー、主に食事をするところとしてレストラン、そのコンビネーションとして居酒屋、酒場、ナイトクラブを対象としました。喫煙禁止の法律は包括的なものと部分的なものとに分けて分析しました。売上げ、売上げ比、雇用者数をアウトカム変数として、法規制による変化を検討しました。172の研究のうち、研究の質が高く必要なデータが使用できる129の研究を使用しました。全体として、17% (n=21)の研究で統計的有意に売上げ、売上げ比、雇用が増加し、12% (n=15)の研究で減少していました。全体としては売上げ、雇用者数における法規制のインパクトは特になく、部分的規制ではむしろ売上げの増加がみられ、包括的法規制では特に変化がありませんでした。受動喫煙規制による経済的なインパクトはほとんどなかったため、まだ受動喫煙規制できていない国に対してのよい情報となると結論付けられていました。

【紹介者コメント】

喫煙可能の飲食店の方が禁煙化に踏み切るかどうかで、最も心配するのは売上の減少です。飲食店における喫煙禁止法の施行により、経済的なインパクトがどうであったかを調べた重要な論文で、日本における改正健康増進法や受動喫煙防止条例の後押しとなった研究論文の一つです。私も飲食店の禁煙化を悩む店主の方とお話しする際には、この研究結果をお伝えすることにしています。長期的な影響を報告した研究はまだ少ないものの、これまでの聞き取りなどを通して、いったん売り上げが下がっても、その後元通りになる、あるいは以前より上がるということが多いようです。日本での法施行は2020年4月であったため、コロナ禍の影響で、直後の検討は難しいですが、今後日本でもこの手の研究をする必要があると思っています。

担当委員:伊藤 ゆり (大阪医科薬科大学 医学研究支援センター 医療統計室)

過去の参考文献

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